コラム② ピッチとストライド

陸上競技の世界に足を踏み入れれば、必ず耳にする言葉があります。

それは「ピッチ」と「ストライド」です。

ピッチとは1秒間に何歩進んだかを表し、ストライドは1歩で進んだ距離を表します。この世のスプリンターや速く走りたいと思っている人たちにとって、ピッチを上げてストライドを伸ばすというのは永遠のテーマと言えるでしょう。なぜなら、走速度はピッチ×ストライドで表されるからです。したがって、多くの選手がピッチを上げる練習とストライドを伸ばす練習に取り組む訳ですが、トレーニングによってストライドは伸ばせても、ピッチを上げるのは難しいとされています。実際に、トレーニングでピッチはさほど変化がなかったものの、ストライドが伸びたことで走速度が向上したという報告があります。

ストライドは全力疾走の80%程度の速度でほぼ最大になり、それ以上の速度で走ってもあまり変わりません。一方、ピッチは走速度の増大と共に高まっていきます。やはり、長期的な視点から考えれば、ストライドが増大するようにトレーニングを重ねていくことが速く走る上で重要と言えるでしょう。

しかし、だからといってピッチの練習を疎かにしてはいけません。ピッチをトレーニングで上げていくのが難しいとしても、ピッチの上げ方は幾らでも改善することができます。ただただ力ずくでピッチを上げる走りをするのと、身体、重力を上手く使ってピッチを上げていくのとでは明らかに効率が違います。効率の良いピッチの上げ方ができれば、消費するエネルギーを抑えることができるので、後半にバテない走りや本数をこなす(予選、準決勝、決勝など)ことができます。100mと200mのタイム差が大きすぎる人などは走り方を考えてみた方がいいかもしれませんね。

参考・引用文献

ヒトの動き百話〜スポーツの視点からリハビリテーションの視点まで〜 小田伸午・市橋則明編(p90-91)